「はい。」
アスカの前に、焼きあがったハンバーグの載った皿を置いた。コーンとにんじん、ブロッコリー、クレソンを添えた。サラダは、別に作って、もう並ベてある。ご飯は、アスカがよそっておいてくれた。
「レイは？」
「これ。」
置いてある、ほうれん草の炒め物を指差した。
「まだ、肉は、だめ？」
「だめって訳じゃないけど．．．なんとなく、ね。」
「そう。悪いわね。」
「ううん。買ってきたものだし。それに、アスカ、好きでしょ？」
「うん．．．」
沈黙が流れた。

「食べましょ？」
「ええ。」
「「いただきます。」」
お味噌汁をすするアスカ。

一口大に切ったハンバーグを口に運びながら、アスカが言う。
「ミサトがいたわね。それに加持さんまで。」
「ええ。」
「あれは？」
「本物よ。」
「そう。」
ほうれん草を口に運んだ。
「ミサトは、前にも来たわよね。」
「沖縄に一緒に行った時ね。」
「そう。今日は加持さんまで．．．」
「．．．」
ご飯を口に運んだ。
「気になっていた．．．？」
アスカが私を見る。
視線をアスカの向こうに移した。
「．．．」
「多分。」
「そう。」
視線をアスカに戻した。
アスカが視線を落とす。
「．．．」
アスカがハンバーグを口に運ぶ。
私は、ほうれん草を口に運んだ。
沈黙が流れた。

アスカが、箸でコーンやにんじんを、ひとつづつつまんでいる。
お味噌汁を飲みながら、アスカを見ていた。

「ほうじ茶にする？」
食器を片しながら、アスカに聞いた。
「ええ。」
「リビング？」
「そうしようかな。」
「じゃ、持っていくわ。」
食器をスポンジで泡立てて、流していく。食器乾燥機に立てていく。
箸を立てて、手をゆすいで、ふきんで手をぬぐった。

ほうじ茶の缶を開けて、急須にいれ、お湯を注ぎ、湯飲みに注ぐ。
お盆に、急須と、湯飲みを２つ。
「羊羹があったかな。」
羊羹を切って、お皿にのせた。

「アスカ。」
リビングのソファにねそべっているアスカ。
ソファの前のテーブルにお盆とポットを置いた。
「あ、羊羹。」
アスカに微笑んだ。
「いただきまーす。」
アスカが、羊羹に楊枝を差し、口に運ぶ。
「おいしー。やっぱり、食後は、デザートが必要よ！」
羊羹に楊枝を差し、口に運んだ。
口の中で崩れ、甘さが広がっていく。
「ね。」
アスカが微笑む。
「ええ。」
アスカに微笑みながら、ほうじ茶を啜った。

「ね？」
突然、アスカが言う。
アスカの方を見た。
アスカが見ている。
「温泉に行かない？」
アスカを見ていた。
「嫌？」
「ううん。そんなこと無いけど。どこへ？」
「沖縄で思い出したんだけど、修学旅行の時、私達は居残りで、結局、浅間山に使徒を回収しに行ったじゃない。レイは、本部待機だったけど。」
「二人目の私ね。」
アスカが私を見る。
沈黙が流れた。
「ごめんなさい。続けて。」
「その時にミサトやシンジと行った温泉なんだけど。どう？」
「いいけど、どうやっていくの？」
「そうね。車か何かで。」
「そう。」
「車か．．．」
アスカが上を見て考えている。
「そうだ！ミサト！」
アスカが立ち上がり、電話台に歩いていくと、受話器を取り、電話をかけはじめた。

ＲＲＲ．．．ＲＲＲ．．．
「はい、加持です。」
「ミサト？」
「あら、アスカ。どういう風の吹き回し？」
「それは、こっちの台詞よ。何よ、その加持ですっていうのは？」
「固いこと言わない。ところで何の用？」
「あのさ、前に浅間山に使徒を回収しに行ったことがあったじゃない？」
「ええ。それで？」
「あの時に行った温泉に行きたいんだけど、車出してくれない？」
「はーん。なるほど。」
「だめ？」
「温泉かぁ、いいわね。」
「でしょお？どう？」
「そうねぇ。一泊？」
「そうそう。どう？」
「ちょっと、待っててくれる？」
「ええ。」
ミサトが加持さんと話している。
「もしもし、アスカ？」
「うん。」
「じゃ、行きましょ。いつ出発？」
「ミサトと加持さんの都合は？」
「そうねぇ．．．明日でもいいわよ。」
「じゃあ、明日．．．えっと、拾っていってくれる？」
「アスカ、今どこに住んでるんだっけ？」
「コンフォート１７マンション。」
「ああ、うちね。分かったわ。じゃ、明日、８時でいい？」
「８時だと、どの位に着くの？」
「そうねー。寄り道しなければ、昼過ぎに着くけど、寄り道するでしょ？」
「フフフ。そうね。」
「じゃ、明日、８時に。」
「あ、そうだ、ミサト？」
「なに？」
「悪いんだけど、宿、取ってくれる？」
「了解。この前の所がいい？」
「出来たら。」
「分かったわ。じゃ、明日。」
「ええ。ありがとう、ミサト。」
ガチャ。

アスカが私を見る。
「明日にしたけど、いいわよね？」
「ええ。」
「じゃ、早速支度しなくちゃ。」
アスカが私に微笑む。
「ええ。」

「着替えに、タオルに、洗面具に、常備薬に、ガイドに．．．」
アスカが、持ち物を指差して確認している。
「あと、何かいるかな？」
アスカが私を見る。
「水着、いるかもね。」
「え？なんで？」
「混浴とか。」
「ああ。そうね。さすがは、優．．．レイ。」
あわてて言い換えるアスカに、苦笑いした。
「笑わないでよ、レイ。」
「ごめんね。」
「あ、そういうわけじゃないんだけど。」
アスカを見て微笑んだ。

「だいたい支度もできたし、お風呂に入ろうかな。」
「明日、朝ご飯は食べていくとして、お弁当作る？」
「うーん。寄り道するとか言ってたから、どこかで食べるんじゃない？」
「そうね。」
「ま、なるようになるでしょ。」
アスカを見た。自然に笑みがこぼれた。
「ね？」
そう言って、アスカが私に微笑んだ。

翌朝。０６３０。
鳥の鳴き声が聞こえる。
目の前にアスカ。
「アスカ。」
「ん．．．うん．．．」
「アスカ。」
「ん。レイ？」
「そろそろ起きないと。」
「．．．うん．．．そうね。」
「先に顔洗うから。」
「うん．．．」

ベッドから出て、上に一枚はおり、トイレにいき、顔を洗い、髪を梳かす。

レンジにマッシュドポテトを入れ、コンロを２つ使って、ホットケーキを焼き始める。
アスカが、顔を洗って、ダイニングに来た。
チン！
レンジが音を立てる。
「出してくれる？」
「ええ。」
アスカがレンジを開けてポテトを出し、冷蔵庫からバター、棚から塩と蜂蜜を取る。
「大きいの１枚でいい？」
アスカに聞く。
「ええ。」
アスカが、フォークとナイフ、そしてカップを２組、テーブルに置いている。
「お待たせ。」
テーブルに、ホットケーキの皿と、ポットを置く。
「それじゃ。」
「「いただきます。」」

「ホットケーキの朝ご飯。いいわよね。」
ホットケーキを切りながら、アスカが言った。
アスカを見て、微笑んだ。
「蜂蜜が、いいのよね。」
切ったホットケーキを、口に運びながら、アスカが言った。

紅茶を飲みながら、アスカを見ていた。

洗い物を終えて、時計を見た。０７４０。少し遅いかな。
歯を磨いて、部屋に戻り、手早く着替えた。
リビングに歩いていく。
アスカがソファに座っている。
「お待たせ。」
「ううん。ミサト遅いわね。」
アスカが腕時計を見る｡
「もう、時間なのに。」
アスカの脇に腰を下ろした。
アスカの肩に頭を預ける。
「レイ？」
「なんとなく。ね。」
「そう。」
「もうすぐ、来るわよ。」
ＲＲＲ．．．
アスカの携帯が鳴り出した。
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モニターのこちら側 Genesis 2:2 完 

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