アスカが私を見る。
沈黙が流れた。
「シンジには．．．」
「．．．」
「なんて言ってるの？」
「何を？」
アスカが視線を右下に落とす。
「．．．」
「アスカの中に私がいること？」
「．．．そう。」
アスカが視線を落としたまま答える。

「アスカは、まだ、ここにいると言っているわ。」
「．．．」
「そのうち、戻ってくるとも、言っているわ。」
「．．．そう。」
「．．．」
「あいつ．．．」
アスカが視線を落としたまま言った。
私は、椅子から立ち上がって、アスカの後ろに回り、アスカを抱きしめた。
「レイ？」
アンチＡＴフィールドを展開する。
 

「綾波。」
「なに？」
碇君が私を見つめて言う。
「アスカって呼んでもいいかな。」
「．．．」
「やっぱり駄目だよね。」
そう言って、碇君が視線を右下にそらす。
「いいわ。」
碇君を見ながら言った。
「アスカ。」
碇君に抱きしめられた。
「．．．」
沈黙が流れた。
「綾波。」
「なに？」
「どうして、アスカの姿をしているの？」
「．．．」
「僕が望んだから？」
「ええ。」
碇君が私を見る。
「．．．」
「アスカは、どうしてるの？」
「．．．」
「．．．」
「私と一緒にいるわ。あの世界で。」
「そう。」
「そのうちに、戻ってくると思う。」
「．．．」
「．．．」
碇君が椅子に腰をおろす。

現実の世界には、徐々に人が戻り、復興が始まっていた。私たちは、破壊の酷い第三新東京市から、まず、御殿場に移動し、次に、元々人の多い第二東京市に移住した。その間に、冬月副司令、日向二尉、青葉二尉とも会った。

「戻ってきたら、綾波は、どうなるの。」
「多分、ここにいると思うわ。」
「もう、話せなくなるの？」
「碇君が望めば、話せるわ。」
「そう．．．よく分からないけど．．．」

「バカシンジ！」
思わず、シンジに話しかけた。
シンジが、立ち上がり、驚いたような顔をして、私を見ている。
「アスカ？」
「．．．」
「アスカなの？」
「そうよ。悪い？」
「．．．」
シンジが私を見ている。
「おかえり。アスカ。」
「ただいま。」
シンジに微笑んだ。
「ここは？」
「第二東京市。ここは、あまり破壊されなかったから。第三新東京市は、いまだに、廃虚だよ。」
「そう。」
「綾波は？」

『聞こえる？』
碇君に直接話し掛けた。
「あ！」
『話すことは出来るわ。』
「こういうことなんだ。」
『ええ。』

「じゃ、帰るわ。」
シンジに言った。
「え？」
シンジが私の顔を見る。
「帰るのよ。」
「．．．そう。」
シンジがそう言ってうつむいた。
「久しぶりに、あんたの馬鹿面を見たくなっただけだから。」
「．．．そう。」
「それじゃ。」
シンジが顔を上げる。
「また、来てくれる？」
「気が向いたらね。」
「そう．．．待ってるよ。」
「レイを泣かせるんじゃないわよ。」
「うん。」
『レイ。』
『いいの？』
『ええ。』
 

ジオフロント。カフェテリアのテラス。
「レイ？」
「．．．」
「ありがとう。」
「．．．」
アスカから体を離した。
アスカを見る。
アスカが立ち上がり、手摺に手をついて、遠くを見ている。
空が赤くなっていた。
アスカの横に立つ。
「レイ？」
「．．．」
「シンジのこと、好きなんでしょ？」
「ええ。」
「じゃあ、なぜ、あんな事をシンジに言うの？」
「アスカが好きだから。」
アスカが私を見る。夕日に染まるアスカ。
「．．．」
「．．．」
「そう．．．」
アスカが空を見た。

「久しぶりに、シンクロしたら、疲れちゃったわ。しかも２度も。」
アスカが私を見た。
「そうね。」
アスカを見て、微笑んだ。
「そろそろ、帰らない？」
「ええ。」
「晩御飯、今日は、レイの当番よね。」
「少し、買い物して帰らないと。」
「そう。じゃ、早く行きましょ。」
「ええ。」

テーブルに戻り、トレイを手に取った。
「これ、飲む？」
ジャスミンティーのカップを差し出す。
「ん。いいわ。」
「そうね。さめちゃってるし。」
そう言って、カップに口を付けた。
「レイ？」
アスカの方を見た。
アスカにキスされた。

アスカが私を見ている。
沈黙が流れた。
「ごめんね。」
「ううん。大丈夫。ちょっと、驚いただけ。」
「そう．．．よかった。」
「．．．」
「いきましょ。」
「ええ。」

アスカが、リーダーにＩＤカードを通す。
プシューッ。
ドアが開く。

カフェテリアの下げ膳口に歩いていく。
ホールを見渡すと、葛城三佐と加持一尉がいた。
葛城三佐が私達に気付いて手を振る。
加持一尉が、おどけて、軽く敬礼する。
私は頭を下げた。
アスカを見た。
アスカが手を振っていた。
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モニターのこちら側 Genesis 2:1 完 

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