「目標のＡ．Ｔ．フィールドは、依然健在。」
開くドア。
飛び込んでくるミサト。
「何やってたの？」
嫌みをいうリツコ。
「言い訳はしないわ。状況は？」
「膠着状態が続いています。」
「パターン、青からオレンジに周期的に変化しています。」
「どういうこと？」
「マギは解答不能を提示しています。」
「答えを導くにはデータ不足ですね。」
「ただ、あの形が固定形態でないことは確かだわ。」
「先に手は出せないか。
　レイ、しばらく様子をみるわ。」
 

厳しい表情でミサトの指示を聞くレイ。
「いえ．．．来るわ。」
 

上空の使徒。突然回転を止めてヒモ状になり、零号機に突き進む。
 

「レイ！応戦して！」
「だめです！間に合いません！」
 

零号機のＡ．Ｔ．フィールドをなんなく貫通し、
零号機の胸部に突き刺さる使徒。
零号機は使徒を左手でつかみ、右手のライフルを直接使徒に押し付けて発射しつづける。
 

発令所
「目標、零号機と物理的接触！」
「零号機のＡ．Ｔ．フィールドは！？」
「展開中！しかし、使徒に侵食されています！」
「使徒が積極的に一次的な接触を試みているの？零号機と。」
 

零号機の胸部から侵入した使徒が、表面に葉脈のような跡を残しながら、侵食していく。
レイのプラグスーツにも同様の現象が起きている。
苦痛と快楽を伴なう感覚に耐えつつも小さく声を漏らすレイ。
 

発令所
モニターが使徒の零号機への侵食を示している。

「危険です！零号機の生体部品が侵されています。」
「エヴァ弐号機、発進！レイの救出と援護をさせて！」

ミサトの指示を受け、発進する弐号機。

零号機とレイの体に広がっていく使徒。

「目標、さらに侵食。」
「危険ね。すでに、５パーセント以上が融合されているわ。」
 

ビルの中から出現する弐号機。

ミサトが指示を飛ばす。
「アスカ。あと３００接近したら、Ａ．Ｔ．フィールド最大でパレットガンを目標後部に打ち込んで。いいわね。エヴァ弐号機、リフト・オフ！」

動かない弐号機。

「出撃よ！アスカ！！どうしたの？
  弐号機は？」
マヤに問うミサト。
「だめです。シンクロ率が二桁を切ってます。」
「アスカ！！」

弐号機プラグ内
「動かない．．．動かないのよ。」
涙声のアスカ。

「このままじゃ、餌食にされるわ。戻して、早く！」

回収される弐号機の向こうに、使徒が見える。
すでに半分以上、使徒に侵されている零号機。
 

レイの心象世界
「誰？
  私？」
エントリープラグの中のレイのイメージ。
「エヴァの中の私？
  いえ、私以外の誰かを感じる。」
プラグスーツ姿でＬＣＬに腰まで浸かり、俯いているもう一人のレイのイメージ。
「あなた誰？
  使徒？私達が使徒と呼んでいるヒト？」
岸に立ち、そのレイを見ているレイ自身のイメージ。
もう一人のレイの声。
「私とひとつにならない？」
「いいえ。私は私。あなたじゃ、ないわ。」
「そう。でも、だめ。もう遅いわ。」

プラグスーツをさらに侵食していく使徒。

「私の心をあなたにも分けてあげる。この気持ち、あなたにも分けてあげる。」

岸に立つレイのプラグスーツを使徒が侵していく。

「痛いでしょ。ほら、心が痛いでしょ。」
「イタイ？ いえ、違うわ．．．サビシイ？そう、寂しいのね。」
「サビシイ？わからないわ。」
「一人がイヤなんでしょ。私達はたくさんいるのに。
  一人でいるのが、イヤなんでしょ。
  それを寂しい、と言うの。」
「それはあなたの心よ。
  悲しみに満ち満ちているあなた自身の心よ。」

プラグスーツの足に落ちる涙。
ハッと気づくレイ。
「涙？
  泣いているのは、私？」
 

零号機の身体が、使徒が侵入した部分からひしゃげていく。

「レイ！」
「初号機の凍結を現時刻をもって解除。ただちに出撃させろ。」
ミサトの叫びを受けたかのように碇が指示を出した。
「え？」
「出撃だ。」
「はい。」
声を荒げるミサト。
 

発進する初号機。
 

弐号機プラグ内
「なによ、私の時は出さなかったくせに．．．」
涙声で呟くアスカ。
 

エレベーター口が開き、市内に出現する初号機。
ガントリーロックが外れ、上体をゆるげる初号機。

「Ａ．Ｔ．フィールド展開。レイの救出、急いで。」
「ハイ。」
ミサトの指示の答えるシンジ。

展開されるＡ．Ｔ．フィールドに、歪んで見える初号機。
それに反応して、後方部を初号機に向ける使徒。

「碇君？！」
叫ぶレイ。

林の中を突き抜け、初号機の胸の辺りへ伸びて行く使徒。
間一髪でよける初号機。

「これは、私の心？碇君といっしょになりたい。」
初号機に伸びる使徒を睨みながら呟くレイ。

パレットガンを破壊される初号機。

「だめ。」
俯いて、侵食している使徒を睨むレイ。
 

発令所
「Ａ．Ｔ．フィールド反転！一気に侵食されます。」
「使徒を抑え込むつもり？」
「レイ！機体は捨てて、逃げて！」

「だめ。私がいなくなったらＡ．Ｔ．フィールドが消えてしまう。だから、だ
め。」
エントリープラグ座席後部の自爆レバーを引くレイ。

「レイ．．．死ぬ気？」
声を震わせるミサト。
「コアがつぶれます！臨界点突破！」

ハッと気づいて振り返り、碇の笑顔を見るレイ。
頬をつたう涙。

使徒と共に爆発する零号機。
蒸発する第３新東京市。
息をのみ、呆然としているミサト達。
爆発の中、立ち尽くす初号機。
呆然としているシンジ。
 

発令所
「目標、消失。」
「現時刻をもって、作戦の終了を告げます。第１種警戒態勢へ移行。」
噛み締めるように指示を出すミサト。
「了解。状況、イエローへ。速やかに移行。」
「零号機は？」
ミサトがマヤに問う。
「エントリープラグの射出は、確認されていません。」

弐号機エントリープラグ内
「生存者の救出、急いで。」
「もしいたら、の話しね。」
無線から聞こえるミサトとリツコの声。

え？

『あなたが死んだら、私、泣くと思うわ。』
ファーストの声が聞こえた気がした。

「うそ．．．」
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モニターのこちら側 Genesis 1:4 完 

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