「．．．鳴らない電話か。」
 

ミサトの部屋のふすまの張り紙
『仕事中。悪いけど声、かけないで』
その前に立つシンジとペンペン。
「ミサトさん、今日もこもりっぱなしだ。」

アスカの部屋のドアにかかるホワイトボード
『許可なく立ち入りを禁ず。勝手に入ったら殺すわよ！』
「アスカ、今日も戻らないつもりかな。」
 

郊外。山腹の一軒家。

床に散らばっているゲームソフト。

私、何してるんだろう。
ゲームの画面に合わせて、ひたすらコントローラを操作する私。
シンクロしようとしている私。

ふと、視線を感じた。

「ヒカリ。」
「な、何？」
「寝ようか。」
「う、うん。」

ゲームの電源をオフした。
立ち上がって、電気の紐を引いて消す。
真っ暗な部屋の床を見ながら、ベッドへ歩いていき、ヒカリの脇へもぐり込む。

ヒカリに背を向けたまま、ヒカリに話し掛ける。
「ごめんね。私、邪魔かな？」
「そんなことないわよ。」
「．．．」
ヒカリ．．．
「私、勝てなかったんだ。エヴァで。もう私の価値なんてなくなったの、どこにも。」
「．．．」
「嫌い、だいっきらい。みんな嫌いなの。」
「．．．」
「でも、一番嫌いなのは私。」
「．．．」
「なんかもう、どうでもよくなっちゃったわ。」
「私はアスカがどうしたって、いいと思うし、何も言わないわ。アスカはよくやったと思うもの。」
喉が苦しくなった。首を曲げた。目が熱くなった。

背中をまるめて、泣き出すアスカ。
 

ネルフ本部。
深夜だが、工事の音が響いている。
赤ランプの点滅が目立つ。
 

リツコの研究室。
灰皿一杯の吸い殻。
机に向かい、電話中のリツコ。
「そう、いなくなったの、あの子。ええ多分ね。猫にだって寿命はあるわよ。
　もう泣かないで、おばぁちゃん。うん、時間ができたら、一度帰るわ。母さんの墓前にも、もう３年も立ってないし。うん。今度は私から電話するから。
　ん．．．じゃ、切るわよ。」
受話器を置くリツコ。
「そう、あのコが死んだの。」
机の上のつがいのネコの置物を見るリツコ。
 

月軌道
月をバックに回転しているロンギヌスの槍。

「ロンギヌスの槍、回収は我らの手では不可能だよ。」

円状にモノリスが浮いている。その中心に碇。

「ロンギヌスの槍、何故使用した。」
「エヴァシリーズ、まだ予定にはそろっていないのだぞ。」
ゼーレの問いに碇が答える。
「使徒殲滅を優先させました。やむを得ない事象です。」
「やむを得ないか？言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ。」
「最近の君の行動には、目に余るものがあるな。」
突然の呼び出し音。
「冬月、審議中だぞ．．．わかった。
使徒が現在、接近中です。続きはまた後程。」
「その時、君の席が残っていたらな。」
消える碇の映像。
「碇、ゼーレを裏切る気か」
キールが呟いた。
 

市内
流れていく風景。
走る車内から指示しているミサト。
「あと、１５分でそっちに着くわ。零号機を３２番から地上に射出。弐号機はバックアップに回して。そう、初号機は碇司令の指示に。私の権限じゃ凍結解除はできないわよ。
じゃ。」
窓の外を見るミサト。山ごしにＤＮＡ型の使徒が見える。
「使徒を肉眼で確認、か。」
 

出撃する零号機。
 

発令所
「零号機発進。迎撃位置。」
「弐号機は現在位置で待機を。」
日向の指示を碇が変更する。
「いや、発進準備だ。」
「司令！？」
「かまわん。おとりぐらいには役に立つ。」
「はい。」
 

ケイジ内の弐号機。開いていくゲート。
「エヴァ弐号機、発進準備。」
 

弐号機エントリープラグ内
「のこのことまたこれに乗ってる。未練たらしいったらありゃしない。」
「弐号機、第８ゲートへ。出現位置決定次第、発進せよ。」
「はん、私が出たって足手まといなだけじゃないの？」
「目標接近、強羅絶対防衛線を通過。」
「どうでもいいわよ、もう。」
 

空一杯に広がり、ゆっくりと回転しているＤＮＡ状の使徒。
発進口の蔭で様子を窺う零号機。
プラグ内、使徒を見つめるレイ。

「目標は大涌谷上空にて滞空。定点回転を続けています。」
無線から青葉の声が聞こえた。
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モニターのこちら側 Genesis 1:3 完 

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