弐号機エントリープラグ内
「バックアップ．．．私が．．．零号機の？」
「そうよ。後方に回って。」
ミサトが答えた。
「冗談じゃないわよ。エヴァ弐号機、発進します。」
みんな、馬鹿にして．．．
 

閃光を発しながら弐号機がケージから発進する。
 

「アスカ！勝手に」
リツコが叫んだ。
リニアレールを地上に向け移動していく弐号機。
「いいわ、先行してやらせましょう。」
ミサトが声を低めた。
「葛城三佐！」
日向の声を無視するミサト。
「ここでダメなら、アスカもここまで、ということね。」
リツコが言ったのをマヤが受ける。
「ラストチャンス、ですか。」
モニターを見たまま、リツコがマヤに呟く。
「弐号機のパイロットの変換、考えとくわよ。」
その言葉に不快感を顕わにしながら、マヤがリツコの横顔を睨みながら答えた。
「はい。」
「あの、初号機はださないんですか？」
日向がミサトに問う。
「待機なのよ。碇司令の絶対命令でね。」
ミサトが一人ごちる。
「あんな事のあとじゃムリないか」

後方にいつものポーズの司令、副司令。
 

ケージ内。監査部によって封印された初号機。中でシンジが待機している。
 

第三新東京市は雨になっていた。立ち込める雲。
日差しを遮り、夕闇の様相を呈している。

市街に立つ弐号機。足元の武器射出口から警報音が鳴り響いている。ザーッという音と共に長距離砲が出てくる。それを掴む弐号機。
 

雨の音が聞こえる。
「これを失敗したら、多分、弐号機を降ろされる。ミスは許されないわよ、アスカ。」
 

第三新東京市に降る雨。
雨にうたれながら天空を睨む銃口。
長距離砲を構え、息を潜める弐号機。

望遠スコープに使徒が映っている。
「目標、未だ射程距離外です。」
無線から青葉の声。
「もう、さっさとこっちへ来なさいよ。じれったいわねぇ。」
スコープ内の使徒が光った。
え？！
光に包まれた。皮膚に光があたる感じ。皮膚に圧力がかかる。頭が圧迫される感じ。
私、どうして生きてるの．．．
え！？
 

「アスカ！」
発令所のモニター。光に包まれた弐号機を見てミサトが叫んだ。
「敵の指向兵器なの？」
ミサトの問いに青葉が答える。
「いえ、熱エネルギー反応なし！」
「心理グラフが乱れています。精神汚染が始まります」
マヤのモニターを受けてリツコが叫んだ。
「使徒が心理攻撃！？まさか、使徒に人の心が理解できるの？」
 

エントリープラグ内。警報が点滅している。
「こんちくしょぉおおおっ！！！」
この居たたまれなさは、なんなのよ！
こいつ、なんなのよ！
撃て撃て撃て撃て撃て撃てぇええええええええ！！！
 

ライフルを連射する弐号機。
どす黒い雲海へ消えていく光弾。
衛星軌道を放物線を描いて進む。
が、届かない。
空しく大気圏で消えていく光。
 

「陽電子、消滅！」
「だめです！射程距離外です」
青葉が叫んだ。
 

コントロールを失いながら、ライフルを撃つ弐号機。
山やビルを吹き飛ばしていく。
雨の中、火柱が立っていく。
玉が切れてもトリガーを引き続ける弐号機。
 

「弐号機ライフル、残弾数、０」
青葉が告げた。
ミサトが問う。
「光線の分析は！？」
「可視波長のエネルギー波です！ＡＴフィールドに近いものですが、詳細は不明です。」
日向が告げた。
リツコが問う。
「アスカは？」
「危険です。精神汚染、Ｙに突入しました！」
心理グラフを見ながらマヤが叫んだ。
 

光に包まれている弐号機。光に包まれているアスカ。
 

一緒に死んでちょうだい
「いやぁぁああああっ！！」
一緒に死んでちょうだい
「私の、私の中に入ってこないで！」
シーツをこうして．．．
「痛い！痛い！痛い！痛い！痛い！いや、いや、いやぁ！！」
シーツをこうして．．．
「私の、私の心まで覗かないで！お願いだからこれ以上、心を犯さないで！」
そして踏み出すの．．．
 

発令所に響くアスカの叫び。

ミサトが叫ぶ。
「アスカ！」
「心理グラフ、限界！
「精神回路がズタズタにされている。これ以上の過負荷は危険すぎるわ！」
マヤ、リツコの声を受けてミサトが叫ぶ。
「アスカ、戻って！」

「いやよっ！！」
アスカが叫んだ。

「命令よっ、アスカ！撤退しなさい！」
「いや！！絶対にいや！！！今戻るなら、ここで死んだ方がマシだわっ！！」
「アスカッ！！」
 

第三新東京市。激しい雨。
アスカの後方、数個のビルにまたがって設置されたポジトロンライフル。
加速機のラジエータに落ちた雨が湯気となって立ち上っている。

「加速機、同調スタート」
「電圧上昇中、加圧域へ」

構える零号機。

「強制集束機、作動」
「地球自転、及び重力誤差、修正０．０３」
「薬室内、圧力最大」
「最終安全装置、解除。」
「全て、発射位置。」

「クッ！」
歯を食いしばるレイ。
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モニターのこちら側 Genesis 1:1 完 

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