「先輩．．．」 
「なに？」 
「大好き．．．」 
そう言って、先輩の右手に左手をからめた。頬がさらに熱くなる。 
「そう。ありがとう。」 
言葉が途切れた。 
「ね、腕組むの止めない？」 
「あ．．．はい。」 
手を離した。 
「ごめんね。」 
「いいえ．．．」 
また、言葉が途切れた。 
「晩御飯、何がいいかしらね。」 
「．．．」 
「どうしたの？」 
「．．．」 
先輩が私を見ている。 
「．．．」 
「いえ、なんでもないです．．．」 
思わず視線を右下にそらした。 
沈黙が流れる。 
「ね、マヤ？」 
「はい。」 
先輩の方を見た。先輩が私を見ている。思わず俯いた。 
「どうしたらいいの？」 
先輩の顔を見た。 
困ったような、悲しそうな顔．．． 
沈黙が流れた。 
「あの．．．」 
「．．．」 
「ついてきてくれますか？」 
「ええ。」 

婦人トイレに入った。 
先輩と一緒に同じ個室に入る。 
先輩を見つめた。 
「先輩．．．」 
そう言って、先輩に抱きついた。 
「マヤ．．．」 
「話さないで。しばらく、このまま、いさせて．．．」 
「．．．」 

しばらく、先輩の鼓動を聞いていた。 
先輩の胸から頬を離す。 
「先輩．．．」 
先輩の顔を見て微笑んだ。 
先輩が肯いたような気がした。 
「行きましょうか。」 
「はい。」 

「晩御飯、何にしましょうか．．．」 
そう言って先輩を見た。 
「そうね．．．」 
エレベーターの階数表示を見ながら、先輩が言った。 

「私は、これがいいかな。」 
先輩が、鈴廣の詰め合わせを指差している。 
「私は、さっきの牛ヒレ肉のカツがいいな。」 
「少し食べさせてくれる？」 
「もちろん。けど、私にもくださいね、先輩。」 
「ええ。いいわよ。 
すみません、これください。」 

「あと、ゴボウのサラダ？」 
「デザートに、トップスのチョコレートケーキ買っていきません？」 
「二人じゃ、食べきれないわよ。」 
「明日も食べましょうよ。」 
「．．．しょうがないわね。」 
苦笑しながら、先輩が言った。 

地下鉄の中。 
「今日は、家に泊っていく？」 
先輩が言った。 
「え？．．．あの、いいんですか？」 
そう言って、先輩を見た。 
「ええ。いいわよ。」 
先輩が微笑んでる。 
「じゃ、そうします。けど．．．」 
「その前に、マヤの家に寄りましょうか。」 
先輩がウインクしてる。 
「はい。」 
先輩に微笑んだ。 

家に寄って、先輩の家にいく途中、家の近くのコンビニの前。 
「先輩、ちょっと、待っててくれます？」 
「？ええ。」 

「おまたせしました。」 
「どうしたの？」 
「じゃーん。」 
「チョコバーアイス．．．チョコレートケーキ買ったじゃない。」 
先輩が呆れたような顔で私を見る。 
「だって、好きなんですよー。」 
「わかったわ。ところで私の分は？」 
「え？」 
「ないの？」 
「あ、あの、ちょっと待っててください。」 
先輩が笑ってる。 

「お待たせしました。」 
「じゃ、溶けないうちに早く帰りましょう？」 
「はい。」 
さすが、私の先輩だわ。 

先輩の部屋のドアの前。先輩が鍵を開けている。 
「さ、入って。」 
「はい。お邪魔します。」 
ダイニングに通された。 
「まず、アイスとケーキを冷蔵庫に入れないとね。」 
「はい。あと、サラダも。」 
「あ、そうね。揚げ物とごはんはレンジで暖めちゃうけど、カツはどうするの？」 
「レンジ、オーブン付いてます？」 
「ホイルで包んで？」 
「はい。」 
「じゃ、そうしましょうか。」 

冷蔵庫の扉を閉めた。 
振り返ると先輩がタイマーをセットしている。 
「これでよし、と。じゃ、私、着替えてくるから。」 
「あ、私もいいですか？」 
「ええ。じゃ、ついてきて。」 
先輩がタイマーを持ってダイニングを出て行く。 
廊下をはさんで、ダイニングの向かいが先輩の部屋だった。 

「なんだか、あったかい絨毯ですね。」 
毛足の長さはごく普通の、灰色の絨毯を指して言った。 
「下に断熱材が敷いてあるの。毛足が長いのは気持ちがいいけど、掃除が大変だから。」 
「へー。これ、いいですね。」 
「気に入った？」 
「はい。」 
視線を絨毯から先輩に移すと、先輩は、ブラウスを脱いでいるところだった。 
ブラウスをたたみ、床に置いて、ブラジャーを外す先輩を見ていた。 
「なに？」 
「あ、いえ、なんでも。」 
「クス。早く着替えて、夕飯にしましょう？」 
「はい。」 
パンツのホックを外しはじめた。 

突然、タイマーが鳴り出す。 
「じゃ、私、先に行ってるから。」 
そう言って、先輩が部屋を出て行く。 
「はい。」 

部屋の中を見まわした。 
洋服箪笥、鏡台、ノートののった机、ベッド．．． 
Ｔシャツを着て、ベッドにうつ伏せになった。 
先輩の匂いがする。 

「．．．ヤ？、マヤ？」 
「ん．．．」 
顔を上げた。先輩が私を見てる。 
「あ、先輩。」 
「夕飯、出来たわよ。」 
「あ、すみません。眠っちゃった。」 
「ふふ。」 
先輩が、私に手を差し出している。 
起き上がって、先輩の手を取った。 

「ワイン、飲む？」 
「あ、じゃ、ちょっとだけ。」 
先輩が食器棚からヴェネチアングラスを２つ取り出してきた。 
「あ、それ．．．」 
「いいでしょ？」 
「はい。」 
グラスに赤ワインを注いでいく。 
ボトルを冷蔵庫に戻した。 
「じゃ、乾杯。」 
「乾杯。」 

食事をしながら、ちらちらと先輩を見ていた。 
「どうしたの？」 
「いえ、なんでもありません。」 
「そう。」 
先輩を見ていた。 

「「ごちそうさまでした。」」 
「じゃ、ケーキ食べましょうか。」 
先輩が食器棚からお皿とフォーク、カップとスプーンを２組、それにナイフを出してきてくれた。私は、冷蔵庫からケーキを取り出した。 
「コーヒーでいい？」 
先輩が、コーヒーメーカーからコーヒーをカップに注ぎながら言う。 
「あ、ティーバッグ持ってきました。」 
「やっぱり。お湯、ポットに入ってるから。再沸騰して使って。」 
「はい。」 
「ケーキ、切っておくわ。」 
「はい。」 
ポットの再沸騰のボタンを押した。 

「じゃ、いただきましょう。」 
「はい。」 

「やっぱり、ここのチョコレートケーキは、おいしいわね。」 
コーヒーを飲みながら先輩が言う。 
「そうですね。」 

「もう一杯、コーヒー飲もうかな。」 
先輩が言った。 
「その前に、アイスを食べないと。」 
「あー、そう言えば、そうだったわね。けど、ちょっと．．．」 
「ふふふ。大丈夫ですよ。」 
「そうかしら。」 
冷蔵庫からアイスを取り出す。 
「はい、先輩。」 
「ありがと。」 
先輩を見つめながら、アイスを食べた。 

「じゃ、洗い物しておくから、お風呂、先に入ってくれる？ 
お湯、半分位入れておいたから、適当に足して入って。」 
「あ、はい．．．あの．．．」 
「なに？」 
先輩が私を見る。 
先輩を見つめた。 
「わかったわ。ちょっと待ってて。」 
先輩が微笑んだ。 
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モニターのこちら側 Genesis 0:5 完 

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