．．． 

カフェテリアにて 

「先輩、どれにします？」 
「そうねぇ。マヤに任せるわ。」 
先輩、お菓子には、あまり興味ないみたい。 
「じゃ、今日は、趣向を変えて、これにしますね。」 
ザラメの付いたおせんべいを取った。 
「それ、コーヒーに合うかしら。」 
「どちらかというと、お茶ですね。」 
「ま、いいわ。」 
ドリンクのコーナーで、先輩は、コーヒーを、私は、タイムティーをとった。 
「やっぱりコーヒーなんですね、先輩。」 
「そういうあなただって、おせんべいにハーブティーじゃないの。」 
「そうですね。気が合いますね。」 
「気が合う！なんだかよく分からないわ。」 
先輩、そう言いながら、笑ってる。 
うれしい。 

「このまま、使徒が攻めてこなければいいのに。」 
「そうね。そうだといいんだけど．．．」 
先輩は、そう言うと視線を遠くに移した。 
私は先輩の横顔を見ていた。 
「どうしたの？」 
どの位、先輩を見つめていたのだろう。先輩が私の方を見ている。 
「あ、いえ。あの．．．」 
「．．．」 
先輩が私を見ている。少し視線を落とした。 
「あの、先輩？」 
「なに？」 
「今日の夜、先輩、なにか予定入ってます？」 
「特になかったと思うけど。」 
視線を上げる。先輩が私を見ている。また、少し視線を落とした。 
「パスタのおいしいお店見つけたんですけど、行きませんか？」 
視線を上げた。先輩が何か考えるように視線を落としている。 
先輩が私を見る。 
「．．．そうね。いいわよ。」 
思わず、笑みがこぼれる。 
「よかった。それじゃ、どこで待ち合わせます？」 
先輩もつられて微笑んでいるみたい。 
「そうね。じゃ、私の部屋に呼びに来てくれる？」 
「はい！分かりました。」 
「随分嬉しそうね。」 
「だって、先輩と食事ができるんですもの。」 
「そう．．．マヤ、彼氏とかいないの？」 
「え？それ．．．どういう意味ですか？」 
私、悲しそうな顔をしていたのかもしれない。 
「あ、別に。なんでもないわ。気にしないで。」 
先輩．．． 
「はい。それじゃ、１７５０に、先輩の部屋に伺いますね。」 
「ええ。待ってるわ。」 
「はい。」 

．．． 

１７５０ 先輩の部屋の前 

先輩の部屋のドア、やっぱり開いてる。 
先輩は、机に向かっている。紫煙をくゆらせながら。 
「にゃんにゃん。」 
ドアの脇の壁を叩きながら言ってみた。先輩が振り向く。 
「あぁ。マヤ。」 
先輩、モニタの猫クロックを見てる。 
「時間ね。ちょっと待ってて。」 
先輩、いつものように凄い速さでキーを打っている。 
いくつかジョブを流して帰るのかしら。 
「これでいいわ。」 
先輩、モニタの電源を落とすと、白衣をハンガーに掛け、バックを取り上げた。 
「じゃ、行きましょうか。」 
「はい。」 
「それで、どこに行くの？」 
「それは着いてのお楽しみ。」 
そう言いながら、先輩にウインクした。 
先輩、ちょっと呆れ顔。 

．．． 

第三新東京市営団地下鉄 

これって、先輩とのデートよね。思わず顔が緩んじゃう。 
「マヤ？」 
「はい？」 
「例のプログラム、進んでる？」 
「はい。予定どうりです。」 
「そう。なら、いいけど。」 
「あの、何か．．．」 
先輩が私の顔を見てる。 
「ううん。何でもないわ。」 
先輩の横顔を暫く見ていた。 
「先輩は、夜は、いつもどうしてるんですか？」 
先輩が私の顔を見る。 
「そうね。本部に残ってることが多いわね。もちろん家には帰るけど。」 
「そうなんですか。」 
「マヤだって、結構残ってるじゃない。」 
「あ、知ってました？」 
「もちろん。母さんから逐一報告が来るのよ。」 
「えーっ！そうだったんですか？！」 
「う・そ。そんな訳ないでしょ。」 
「先輩、それ冗談ですか？！」 
「マヤ、それ、どういう意味？！」 
思わず二人で笑っていた。 

．．． 

「マヤ、まだ着かないの？」 
六本木駅で地下鉄を降りてから、もう１０分近く歩いていた。 
「もうすぐですから。」 
脇道に入って、少し歩く。 
「ここです。」 
「ＬＵＮＡ。ふーん。ここが。」 
「先輩、知ってるんですか？」 
「雑誌で見たような気がするわ。」 
「そうなんです。私も、雑誌で見て、来てみたら、おいしかったので．．．」 
「そう。じゃ、入りましょ？」 
「はい。」 
ドアを開けて中に入る。 
「何名様でしょうか？」 
「二人です。」 
「かしこまりました。どうぞ。」 
先輩の方を見た。 

．．． 

「ご注文はお決まりでしょうか？」 
「先輩？」 
先輩が目配せする。 
「えーと、私は、魚介類のサラダと、野菜スープ、明太スパゲティに、木苺のア 
イスクリーム。」 
「私は、ナスのマリネと、魚のスープ、イカスミスパゲティに、エスプレッソ。 
それと．．．」 
「はい？」 
「このＬＵＮＡ ＬＵＮＡ ＬＵＮＡというのは？」 
「当店オリジナルのピザです。」 
「そう．．．」 
先輩が私の方を見る。私は先輩の目を見てうなづく。 
「それじゃ、それを一つ。」 
「かしこまりました。お飲み物は、何にいたしましょうか？」 
「先輩、どうします？」 
「マヤにまかせるわ。」 
「それじゃ、ハウスワインの白を。」 
「かしこまりました。以上でよろしいでしょうか？」 
「はい。」 

「先輩、鋭いですね。」 
「単に妙なものが好きなだけよ。」 
「ふふふ。」 
「あ、笑うことないでしょ？」 
「ごめんなさい。」 
「いいのよ。」 
「お待たせしました。ハウスワインの白です。」 
「あ、はい。」 
ウェイターが、グラスとハウスワインのピッチャーを置いていく。 
「じゃ、乾杯しましょうか？」 
「はい。」 
「それじゃ、平穏な日々に乾杯。」 
「乾杯。」 
私は先輩がワインを飲むのを見ていた。 
「結構おいしいわね。このワイン。」 
「ええ。そうなんですよ。」 
「ふーん。前は誰と来たの？」 
「ユッコ．．．あの、オペレータの清水幸子ちゃんと来ました。」 
「ああ、あの子ね。そう。てっきり、青葉君か誰かと来たのかと思った。」 
「．．．」 
先輩．．． 
「どうしたの？」 
「あの。私、男の人とは、こんな風に会ったことないんです。」 
「そう。そういえば。マヤは学生のころから、そうだったわよね。」 
「ええ。」 
沈黙が流れた。 
「失礼します。魚介類のサラダとナスのマリネです。」 
「ありがとう。」 
ウェイターがサラダとマリネを置いていく。 
「いただきましょうか。」 
「はい。」 
先輩が、マリネを切り、口に運ぶ。 
「先輩。」 
「？」 
先輩が私の方を見る。 
「私、先輩のことが．．．好きなんです。」 
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モニターのこちら側 Genesis 0:0 完 

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