「そろそろ行こうか。」
アスカが口を開く。
「え？」
マユミが、アスカを見て、そして、腕時計を見た。
「あ、もうこんな時間。」
マユミが、アスカを見る。
「うん。行こう。」
アスカが微笑む。
アスカとマユミが立ちあがった。
「今日、一緒に帰らない？」
アスカが言う。
「いいよ。」
マユミが微笑んだ。
 

放課後

マユミが図書館で本を読んでいた。
アスカが近づいてくる。
「マユミ。」
マユミがアスカを見上げる。
「アスカ。」
「行こう？」
「うん。」
マユミが立ちあがった。
 

街を見渡せる公園

アスカとマユミがベンチに腰を下ろしていた。
「アスカ？」
街を見ていたマユミが口を開く。
「何？」
アスカも街を見ていた。
「碇君、どちらかを選ぼうとすると思う。」
沈黙が流れた。

「そうね。」
アスカが口を開く。
「まず、私達のことを、碇君に言わないと。」
マユミが、アスカを見た。
アスカが街を見ていた。
「そうね。」
マユミが、街のほうを見る。
沈黙が流れた。

「二人で言う？」
マユミが、街を見たまま言う。
「ちょっと恥ずかしそう。」
アスカがマユミを見た。
「一人で言える？」
マユミが、街を見たまま言った。
アスカが、マユミから目を逸らし、そして、街の方に向き直った。
「言えないと思う。」
マユミが、息を吸って、そして吐き出した。
沈黙が流れた。

「今から行く？」
マユミが言う。
「．．．」
アスカが俯く。
マユミがアスカの方を見た。
アスカを見て、そして、ベンチの背にもたれて、空を見上げた。

「そうだね。」
アスカが、俯いたまま呟く。
「．．．うん。」
マユミが呟いた。
 

葛城邸玄関前

アスカが鍵を開ける。
いつもの音をたてて、ドアが開いた。
たたきにシンジの靴があった。
「ただいま。」
そう言いながら、アスカが靴を脱ぎ、スリッパに足を入れる。
「お帰り。」
中から、シンジの声がした。
「お邪魔します。」
スリッパに足を入れながら、マユミが言った。

アスカとマユミが、ダイニングに入ると、シンジが、ダイニングに入ってきたところだった。
「山岸さん、いらっしゃい。来るなら、言ってくれればよかったのに。」
「ごめんなさい。帰り道で、アスカと話してて、急に来る気になったの。」
「そうなんだ。夕飯、食べていく？ まだ、作ってないから、増やせるけど。」
「あ、そんなに長居するつもりないから。」
「そうなんだ。」
「うん。
  それでね．．．」
マユミがシンジを見て、軽くはにかむように俯き、アスカを見た。
「え．．．うん．．．」
アスカがシンジを見て、視線を逸らす。
不思議そうな表情で二人を見るシンジ。
「あの、ここじゃなんだから、私の部屋に行かない？」
アスカが、シンジを見た。
「うん。
  いいけど。」
シンジが、怪訝な顔をして、アスカを見ていた。
 

ベッドにマユミとシンジを座らせ、アスカが椅子にかけていた。
「あの．．．二人共、どうしたの？」
シンジが、口を開く。
「うん。あのね．．．」
アスカが、右下に視線を落としている。
「あのね、碇君。」
俯いていたマユミが口を開く。
「今日、アスカから、碇君、私も、アスカも、綾波さんも好きだって、聞いたんだけど．．．」
「あ．．．うん．．．」
シンジが俯く。
「それでね．．．」
「．．．」
「碇君、やっぱり、誰か一人を選ぶ．．．よね．．．」
「え．．．うん．．．」
「そう．．．」
沈黙が流れた。

「気付いてるかもしれないけど、アスカと私って、仲がよくて．．．」
マユミが口を開く。
「キスしたこととかあるの。その先も。」
シンジが、マユミを見る。そして、アスカを見た。
アスカがシンジを見る。
「あの、だから、できたら、３人でいたいなって思って．．．」
シンジが、呆然として、アスカを見ていた。
「気持ち悪い？」
アスカが、シンジを見て、そして俯いた。
「マユミには、私から迫ったから。嫌うんだったら、私を嫌って。」
アスカが、体を丸めた。
沈黙が流れた。

ＲＲＲ．．．ＲＲＲ．．．ＲＲＲ．．．

電話の呼び出し音が聞こえた。
シンジが立ちあがり、部屋を出ていく。

「アスカ？」
ドアの向こうから、シンジの声がした。
「何？」
アスカが、俯いたまま言う。
「ミサトさん、今日も遅いって。」
「そう。」
少しの間のあと、シンジの部屋の戸が閉まる音がした。

「碇君、部屋に行っちゃった？」
マユミが呟く。
「そうみたいね。」
アスカが呟く。
「私達、振られちゃったかな。」
アスカの肩が、ぴくりと震えた。
「．．．ごめんね。」
アスカが呟く。
沈黙が流れた。

シンジの部屋の戸が開いて、閉まる音がした。そして足音。
「どこか行っちゃうのかな。」
マユミが言う。
「．．．」
アスカが立ちあがって、部屋を出ていく。
マユミも立ちあがった。

二人がリビングに入ると、シンジが野菜を洗っていた。
「シンジ？」
アスカが、声をかける。
シンジが、二人を見た。
「山岸さん、夕飯、どうする？」
「え？ あ、ちょっと待って。」
マユミが、部屋に戻ろうとする。
「電話使っていいよ。」
シンジが、微笑みながら言う。
「あ、うん。」
マユミが、電話台まで歩いていき、受話器を取った。
マユミがボタンを押す。
アスカが、シンジを見ていた。

「マユミですけど。」

「あの、今日も、惣流さんに夕飯誘われてて。」

「うん。」

「はい。」

「いいって。」
受話器を置きながら、マユミが言う。
「そう。じゃ、山岸さんの分も作るから。」
システムキッチンの方を向いたまま、シンジが言う。
「あの．．．」
マユミが言う。
シンジが手を止めた。
「少し、考えてもいいよね。」
シンジが、再び、手を動かし始めた。
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赤いリボンと緑のベスト Genesis 0:9 完 

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