「夕飯、何がいい？」
シンジが、少し大きめの声で言う。
「．．．」
マユミがシンジを見る。
「私の口に合うものなら、何でもいいわ。」
アスカが言う。
「どうしようかなぁ。」
頭の後ろに手を組んで、天を仰ぐシンジ。
「ちょっと疲れたから、食欲の出るものがいいかな．．．」
マユミが言う。
「辛いもの？」
シンジが上を見たまま言う。
「．．．そうかも。」
マユミが言う。
「カレーとか？」
シンジが言う。
「カレー？」
ちょっと嫌そうな感じでアスカが言う。
「嫌？」
「ちょっとね。」
「カレーピラフにしようか？」
シンジがアスカを見る。
「カレーピラフ。いいかも。」
「山岸さんは？」
シンジがマユミを見る。
「いいよ。」
「じゃ、そうしようか。」
シンジがアスカを見る。
「了解。」
アスカが微笑んだ。
 

地下鉄の駅

「それじゃ、僕は、買い物して帰るから。」
シンジが言う。
「それじゃ、後でね。」
アスカが言う。
マユミが微笑みながら、手を振る。
シンジも手を振った。

シンジが見えなくなって、アスカとマユミが歩き出す。
「いいね。」
マユミが言う。
「そう？」
アスカが言う。
「碇君と話せるようになってよかった。」
「マユミなら、もっと仲良くなれるよ。」
「．．．」
沈黙が流れた。

「どうしたの？」
アスカが聞く。
「アスカは、いいの？」
マユミが、少し俯き気味に答える。
「．．．」
沈黙が流れた。

「だって、同じ家に住んでるのに、こんな感じなのよ？」
アスカが、ほんの少しだけ強い調子で言う。
「碇君、アスカと話すほうが自然な感じがする。」
マユミが言う。
「それは、付き合いが長いだけ．．．」
マユミが、立ち止まって、アスカを見た。
アスカがマユミを見る。
沈黙が流れた。

マユミが前を向く。
「ごめん。変なこと言って。」
そう言って、マユミが歩き出した。
「マユミ．．．」
アスカも歩きだす。
「ごめんね、マユミ。」
アスカが言う。
「ううん。悪いのは、私。」
「．．．」
「私が、碇君に言えばいいことだから。」
「．．．」
「けど、碇君の前では言えなくて。」
「．．．」
「それを、アスカのせいにして。」
「．．．」
「自分でも自分が嫌になる。」
立ち止まるマユミ。
「マユミ．．．」
立ち止まって呟くアスカ。
「私なんか、死んでしまえばいいのに。」
俯いて呟くマユミ。
「．．．」
沈黙が流れた。

「マユミ．．．」
アスカが呟く。
「．．．」
マユミが俯いている。
「そんな風に思ってたら、本当に死ぬわよ。」
「！」
マユミの肩が、わずかに震えた。
「人間、道を歩いているだけでも、死ぬときは死ぬから。」
「．．．」
「私は、マユミに死んで欲しくない。」
「．．．」
「それじゃ、駄目？」
「．．．」
沈黙が流れた。

「アスカ。」
マユミが俯いたまま呟く。
「何？」
アスカが答える。
「ありがと。」
マユミが呟いた。
「．．．」
沈黙が流れた。

「行こう？」
アスカが言う。
マユミが顔を上げて、アスカを見た。
「うん。」
マユミが微笑んだ。
 

山岸家玄関

アスカが、廊下に腰を下ろしている。
「お待たせ。」
そう言いながら、マユミが階段を降りてくる。
「ううん。」
アスカがマユミを見上げて言う。
「じゃ、行こうか。」
立ちあがって、アスカが言う。
「うん。」
そう言いながら、マユミが靴をはく。
アスカがマユミを見ていた。
マユミがアスカを見る。
「何？」
「別に。」
「そう。」
マユミが微笑む。
「アスカ？」
「ん？」
「ありがと。」
マユミの唇がアスカの唇を塞いだ。
 

葛城家玄関

アスカが、鍵を開ける。

プシュー。

ドアが開く。
「おかえり。」
中から、シンジの声がした。
「ただいま。」
アスカが言う。
「お邪魔します。」
マユミが言った。

アスカとマユミがダイニングを通る。
「何かすることありますか？」
マユミが言う。
「え？うーん。別にいいよ。」
シンジが、にんじんを刻む手を休めて言う。
「じゃ、出来たら呼んでね？」
アスカが言う。
「うん。分かった。」
シンジが答える。
「行こ。」
アスカが、マユミを見る。
「うん。」
マユミが、シンジを見ながら言った。

アスカとマユミがダイニングを出ていく。
「いいの？」
マユミがアスカに聞く。
「いいのよ。下手に手伝っても、気を使わせるだけだし。」
アスカが答える。
「そう。」
「そういうときは、買い物から一緒にしないと。」
「そういうこともあるの？」
「前はね。最近は、全然。」
「そう。」
アスカが部屋のドアを開けながら、口を開く。
「マユミなら、買い物付き合ってくれるんじゃないかな。」
「そう？」
「多分。」
「．．．」
マユミが何か考えるようにしていた。
「座らない？」
アスカが、ベッドを指差しながら言う。
「うん。」
マユミがベッドに腰を下ろす。
アスカが、マユミの隣りに腰を下ろした。
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赤いリボンと緑のベスト Genesis 0:5 完 

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