ベッドの上で、シンジが目を開く。
「夢か．．．」
シンジが呟いた。
「アスカ．．．か。」
 

少し雲のある青い空。鳥の囀りが聞こえる。
いつも学校へ行く道を、シンジとアスカが歩いていく。
シンジは、いつものＹシャツにズボン。
アスカは、水色のシャツに青いスカート、そして白く透ける薄い上着を着ていた。
「その上着、この前買った奴？」
シンジがアスカの服を見て言う。
「そう。
  珍しいじゃない、服のこと言うなんて。」
アスカが、ちょっと驚いたような顔でシンジを見た。
「え、ああ、うん。ちょっとね。」
シンジが、少しうろたえたように、前に視線を逸らして言う。
「そう．．．」
アスカが、少し切なげな表情をして、前を向いた。

「マユミには、そんな風に言うの？」
唐突に、アスカが言う。
「え？」
シンジがアスカを見る。
アスカが前を見ていた。
「そういうわけじゃないけど．．．」
シンジが前を向いて言う。
「言われるとうれしいと思う。」
アスカが言う。
シンジがアスカを見た。
「．．．」
アスカは、あいかわらず前を見ていた。
「そう．．．」
シンジが呟いた。

待ち合わせをした本屋に着いた。
マユミが本を立ち読みしていた。
「山岸さん。」
シンジが近づいて、声をかける。
「あ、碇くん。」
マユミが、シンジに微笑んで、本を置いた。
「行こう。」
マユミが言う。
「うん。」
シンジが微笑んで歩き出す。
マユミがアスカを見つける。
マユミが、微笑んで、手を振った。
アスカもそうした。

「ごめんね、邪魔しちゃって。」
マユミが、アスカに言う。
「別に、邪魔とか、そういうことじゃ．．．」
マユミがアスカの耳に口を近づけ、囁く。
「ごめん。」
マユミがアスカを見る。
アスカがマユミを見た。
「．．．」
沈黙が流れた。

「ね、今日は、どこに行くの？」
マユミがアスカに聞く。
「新渋谷の１０９とか．．．」
アスカが答える。
「その上着は、どこで買ったの？」
「１０９。」
「あ、そうなんだ。」
「マユミは、その服、どこで買ったの？」
マユミは、白いシャツに紺のフレアスカート、そして、クリーム色のチョッキを着ていた。
「新新宿の高島屋。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。

地下鉄の駅に着いて、券売機の前に立つ３人。
「結局、どこに行くの？」
シンジが、誰にともなく聞く。
マユミとアスカが顔を見合わせる。
「新渋谷でしょ？」
マユミが言う。
「．．．じゃ、そうするね。」
アスカが答えた。
 

地下鉄列車内

マユミがアスカの耳に口を寄せる。
「アスカは、碇君とキスしたことあるの？」
驚いた顔でマユミを見るアスカ。
アスカがマユミの耳に口を寄せる。
「一度だけ。」
マユミがアスカの耳に口を寄せる。
「そう。」
アスカがマユミの耳に口を寄せる。
「けど、私がキスしようか、って言って無理やりした感じ。」
マユミがアスカの耳に口を寄せる。
「そう。」
マユミが前を見た。
アスカも前を見る。
三人が並んで、向かい側の窓に映っていた。
 

新渋谷１０９

「今日は、何買うの？」
マユミが言う。
「うーん。特に、これっていうのはないけど．．．」
そう言いながら、アスカは、バッグを見ていた。
「バッグ？」
マユミが言う。
「か、ブラウスとスカートかな．．．」
アスカが、マユミを見て言う。
「そう。」
「とりあえず、服、見に行こうか。」
「うん。」
マユミが微笑んだ。

アスカが、赤いシャツと紺のスカートを、手にして見ていた。
マユミは水色のワンピースを眺めていた。
シンジは、売り場の端に立っていた。
アスカがシャツとスカートを戻し、マユミの方に歩きだす。
アスカがマユミの脇に立ち、ワンピースを眺める。
「買った？」
マユミがアスカを見て言う。
「うーん、ちょっと考えようと思って。」
「そう。」
マユミが、ワンピースを見る。
「私も、そうしようかな。」
マユミがアスカに微笑んだ。
「で、お昼、食べに行かない？」
アスカが言う。
「そろそろ空いてるかもね。」
マユミが答えた。
二人がシンジの方に歩き出す。

「どうしたの？」
シンジが言う。
「お昼食べようかと思って。」
アスカが言う。
「ああ。」
シンジが時計を見る。１時を少し回ったところだった。
「そうだね。」
シンジがアスカを見て、微笑んだ。

「何にしようか。」
エスカレーターの方に歩きながら、シンジが言う。
「マユミは何がいい？」
アスカが言う。
「いつも何食べてるの？」
マユミが言う。
「この前は、スパゲティーよね？」
アスカがシンジに言う。
「うん。そうだね。」
シンジが答えた。
「スパゲティーでいい？」
アスカがマユミに聞いた。
「いいよ。」
マユミが頷いた。
 

キリコ・ディ・ナポリ内

「お待たせしました。」
店員が、３人の前にスパゲティーの盛られた皿を置いていく。
アスカの前には明太子スパゲティー、マユミの前にはスパゲティー・ナポリタン、そして、シンジの前には、うにのスパゲティーが置かれた。
「ごゆっくりどうぞ。」
店員が歩いていった。

「食べようか。」
シンジが言う。
「ええ。」
アスカがフォークを持つ。
マユミもフォークを持った。
シンジが、うにをフォークで切り、口に入れた。
「おいしい？」
アスカがシンジに聞く。
「うん。」
「ちょっともらっていい？」
「いいよ。」
アスカが、うにをひとかけらと、スパゲティーを一本取り、口に入れた。
「おいしい。今度作ってよ。」
「了解。」
マユミが、二人を見ていた。
シンジがマユミを見る。
「山岸さんも食べる？」
「え．．．じゃ、ちょっとだけ。」
マユミが少し顔を赤くしながら、フォークをシンジの皿に伸ばし、うにとスパゲティーを取り、口に入れた。
「おいしい。」
シンジが微笑む。
「今度、山岸さんも呼んで、スパゲティー作って食べようか？」
シンジがアスカに言う。
「いいかも。」
アスカが微笑んだ。
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赤いリボンと緑のベスト Genesis 0:3 完 

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