シンジが、レイを見る。
レイがシンジを見ていた。
「あけましておめでとう。」
シンジが、少し躊躇いながら言う。
「今年もよろしくお願いします。」
レイが、微笑みながら、ほんの少し頭を下げて言った。

善光寺の参道の混雑が映し出される。
「混んでるね。」
シンジが呟いた。
「そうね。」
レイが答える。
「明日の朝、早く行く？」
「ええ。」
「了解。じゃあ、早く寝ようか。」
シンジがレイを見る。
「はい。」
レイが頷いた。
 

元旦 ０５３０

目覚ましのベルが鳴っていた。
「ん．．．」
シンジが、手を伸ばし、目覚ましを止める。
「はあ．．．」
ため息をつきながら、シンジが体を持ち上げる。
「．．．寒いな。」
そう言いながら、シンジが、横を見る。
レイが、眠っていた。

「レイ．．．」
レイの肩を揺らしながら、シンジが言う。
「ん．．．」
レイが、目を開けた。
「時間だよ。」
「うん．．．」
レイが、体を起こした。
 

レイが、化粧を終えて、洗面所からダイニングに入ってくると、シンジが、キッチンに立っていた。
レイが、シンジの隣に立つ。
「用意、できた？」
シンジが言う。
「うん。ごめんね。」
焼き網の上の切り餅を見ながら、レイが言う。
「何も食べないと、寒いから。」
「うん。」
沈黙が流れた。
 

０６４２ 善光寺参道

参道は、テレビで見たほどではなかったが、かなり混んでいた。
シンジが、時々、レイの方を見ていた。
「何？」
レイが呟く。
「．．．なんでもないよ。」
シンジが言う。
「そう．．．」
「．．．」
レイが、シンジの右手を左手でつかんだ。
沈黙が流れた。

少し歩いていると、東の空が明るくなってきた。
「初日の出だね。」
シンジが言う。
「そうね。」
レイが答えた。
人波に流されながら、二人が呟いた。

お戒壇めぐりを終えるころには、かなり日が高くなっていた。

「触れた？」
シンジが言う。
「ええ。」
レイが、相槌をうつ。
「そう．．．」
「．．．」
人波の流れている方へ、二人が歩いていく。
 

城山公園への道を歩いていた。
「この後、どうしようか。」
シンジが言う。
「．．．」
レイが、遠くを見ていた。

「桜が咲いてたわね。」
レイが呟く。
「え？」
シンジが、レイを見る。
「前に来たとき。」
「．．．」
沈黙が流れた。

「学生のころのこと？」
シンジが言う。
「ええ．．．
  そうね。あの時は、私じゃなかった。」
レイが呟く。
「そうだね．．．」
シンジが呟いた。

「あの時は、城山公園で、花見をしながら、お昼を食べたんだっけ？」
シンジが言う。
「そうね。」
レイが、前を見たまま答える。
「その後、かなり歩いたんだよね。」
少し苦笑しながら、シンジが言う。
「ええ。」
「．．．」
「．．．」
沈黙が流れた。

「レイが死んでしまって．．．」
「．．．」
「また一人になって．．．」
「．．．」
「レイは、一緒にいてくれたけど．．．」
「．．．」
「けど、また、こんな風に話せるようになるとは、思ってなかった。」
「．．．」
「．．．」
「そう．．．」
沈黙が流れた。

「レイ？」
シンジが呟く。
「何？」
レイが相槌をうつ。
「ずっと、いてくれるよね。」
「．．．」
「．．．」
「そうね．．．」
「．．．」
「．．．」
「僕が先にいなくなる？」
「分からないわ。誰にも。」
「そう．．．」
「．．．」
「いようとはしてくれる？」
「ええ。」
「．．．ありがとう。」
「ううん。」
「．．．」
沈黙が流れた。
 

碇家

ダイニングのテーブルに、おせちのお重が置かれていた。
レイが、お盆に、徳利とお猪口、そして、雑煮の椀を載せてくる。
「おまたせ。」
レイが、シンジの前に、お猪口を置き、徳利からお屠蘇を注ぐ。
「ありがと。」
レイが、徳利を置く。
シンジが、徳利を取り、レイの前のお猪口に、お屠蘇を注ぐ。
シンジが、徳利を置いて、お猪口を取り上げる。
「じゃあ、改めて、おめでとう。」
「おめでとう。」
ほんの少し、お猪口を互いに向けて、そして、お屠蘇を飲んだ。
シンジが、お猪口を置く。
「食べようか。」
シンジが、雑煮の椀に手をかける。
「ええ。」
レイが微笑んだ。
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モニターのこちら側 Genesis 5:Ex.2 完 

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