シンジが、ドアの鍵を開け、ドアを開ける。
ドアを締めて、鍵を閉めた。
「ただいま。」
「お帰りなさい。」
奥から、レイの声がした。

靴を脱いでいると、レイが出てきた。
「お疲れ様。」
レイが言う。
「うん。」
そう言って、レイに鞄を渡した。

「明日、大丈夫？」
スリッパを履きながら、歩いていくレイに聞く。
「ええ。」
ほんの少し首を動かして、レイが答えた。
 

１２／２４ １８２４
ホテルメトロポリタン長野

雪が降っていた。
シンジが、ロビーに入ってくる。
「暑いな．．．」
シンジが呟く。
ロビーは、少しむっとするくらいに、暖房が効いていた。
『レイ？』
シンジが、ゆっくり歩きながら、ロビーを見渡す。
『ここ。』
シンジが、目くばせをしながら、奥の方に歩いていく。
「シンジ。」
声の方を見ると、レイが、ソファに座って手を振っていた。
シンジが、レイの脇に立つ。
「分からなかったよ。」
「そう？」
栗色の髪と黒い目で、レイが微笑んだ。
 

エレベーター内

「外に出るときは、そうしてるの？」
シンジが、レイを見ながら、聞いた。
「ええ。」
レイが、シンジを見て答える。
「やっぱり、本当の髪と目は目立つ？」
「ええ。」
「そう．．．悪いね．．．」
「ううん。」
レイが、小さく首を振りながら、そう言って、シンジの右手を左手で握った。
 

スカイラウンジ アポロ

ウェイターが、シャンパンと、前菜の皿を置いていく。
「野菜と帆立貝のゼリー寄せ 香草ソース です。」
そう言って、ウェイターが歩いていった。

「じゃあ．．．メリークリスマス。」
そう言って、シンジが、シャンパンのグラスを、レイの方に差し出す。
レイが、グラスを、シンジのグラスに軽くあてた。

チン。

小さな音がした。
シンジが、グラスを口にあて、シャンパンを飲む。
レイも、少し、シャンパンを口に入れた。

シンジが、フォークを皿に置く。
レイが、外を見ていた。
少し強く降っている雪の向こうに、長野の街の灯りが瞬いていた。
シンジは、外の灯りを見て、そして、レイに視線を移した。
沈黙が流れた。

「今年も終わりね。」
レイが呟く。
「そうだね。」
シンジが、レイを見ながら言う。
沈黙が流れた。

レイが、スープを飲んでいる。
シンジが、スープを飲み終わり、そして、スノーキャンドルのグラスに口をつけた。

ウェイターが皿を置いていく。
「ひらめのムニエルです。」
そう言って、ウェイターが歩いていった。

「食べよう？」
シンジが口を開く。
「ええ。」
レイが頷きながら、ナイフとフォークを取った。

「レイは、イエス・キリストって、知ってるの？」
鴨肉のソテーを飲み込んだシンジが言う。
「？」
レイが、不思議そうな顔をする。
「あ、いや、そういう意味じゃなくて、会った事があるのかと思って。」
「．．．」
「．．．」
「．．．あるわ。」
「そうなんだ．．．」
「．．．」
「．．．」
「どんな人だったの？」
「．．．忘れたわ。」
「そう．．．」
「．．．」
沈黙が流れた。

ウェイターがデザートの皿を置いていく。

シンジが、イチゴの載ったケーキにフォークを入れる。
レイが、ウサギの形をしたアイスクリームにスプーンを入れた。

「父さんに会いに行ったら、なんて言うかな。」
シンジが口を開く。
「？」
レイが、スプーンを口から離しながら、シンジを見る。
「その姿だと、まるで、母さんみたいだから。」
「．．．そうね。」
「今度の休みにでも行ってみようか。」
「．．．」
沈黙が流れた。

シンジが、紅茶のカップを置く。
レイが、紅茶のカップに指をかけたまま、外を見ていた。
「よく降るわね。」
レイが呟く。
「そうだね。」
シンジが、外を見ながら答えた。
「しばらく降らなかったなんて、思えないくらい。」
「そうだね。」
沈黙が流れた。

「レイは、雪が見たかったの？」
シンジが呟く。
「．．．なぜ？」
レイが、シンジを見る。
「レイが、こうした．．．そうか。そうじゃないんだね。」
「ええ。」
「僕は．．．そう。元に戻したかったから。」
「そう。」
「そうだね．．．」
沈黙が流れた。
 

地下鉄内

地下鉄の音がしていた。
向かい側の窓ガラスに、シンジとレイが並んで映っていた。
「レイ？」
シンジが少し大きな声で言う。
「何？」
レイが、シンジを見る。
「また、行こう？」
「ええ。」
レイが、シンジの右手に、左手を重ねた。
 

地下鉄の駅から外に出ると、雪が降っていた。
「よく降るな。」
シンジが言う。
シンジの息が白くなった。
「そうね。」
傘を開きながら、レイが答えた。

「はい。」
開いた傘を、レイが、シンジに渡す。
「ん？」
シンジが傘を受け取りながら、要領を得ないように答える。
レイが、シンジの腕を取って、寄り添った。
レイが小さく微笑む。
「うん。」
シンジが頷いて、そして歩き出した。
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モニターのこちら側 Genesis 5:Ex.1 完 

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