アナウンサーが新しい年になったことを告げる。
「おめでとう。」
シンジを見て言った。
「今年もよろしく。」
シンジが微笑みながら言う。
「今年もよろしく。」
ミサトを見て言った。
「今年もよろしく。」
ミサトが微笑んだ。

「初詣、どうする？」
シンジを見て言った。
シンジがミサトを見て、私を見る。
「アスカの行きたいところでいいよ。」
「そう．．．」
ミサトを見た。
「どこか行きたいところある？」
「早めに起きて、善光寺とかに行く？」
「混んでるでしょ？」
「普通の朝の時間は、結構空いてるはずよ。並んではいると思うけど。」
「そう。じゃ、早く寝て早く起きようか。」
「そうしよう。」
ミサトが微笑む。
「了解。」
ミサトに微笑んだ。
 

「．．．カ．．．アスカ．．．」
肩を揺すられている。
目を開けると、シンジが、私を見ていた。
「シンジ．．．朝？」
シンジが微笑む。
「うん。ちょっと早いけど。」
「うん．．．」
体を起こした。
時計を見ると６時前だった。
「早いわ。」
ほんの少し責めるような口調で言った。
「７時には、着きたいんだって。」
「．．．了解。」
少し膨れっ面をしてみる。
「ごめん。アスカ。」
シンジの唇が、私の唇に重なる。
シンジの唇が離れた。
シンジが微笑む。
シンジに微笑んだ。
 

地下鉄内
「結構、混んでるわね。」
ミサトに言う。
「うん。けど、少し遅くなると、ラッシュ並みになると思う。」
「そう。ま、仕方ないのかな。」
「皆、有名なところに行くから。」
「地元の神社には行かないわけ？」
「行くんじゃない？」
「いくつも行くんだ。」
「まあ、お参りするだけだしね。」
「ミサに出るわけでもないし？」
「そ。」
「ふーん。」
地下鉄特有のノイズが響いていた。
 

善光寺
すでに、参道から本堂まで列ができていた。
「この時間で、これ？」
ミサトに言う。
「遅くなると、もっと長くなるわよ。」
「なんだか、疲れちゃうわね。」
「ま、ささっとお参りして帰りましょう。混むから。」
「そうね。」
山門の方を見て、そして、足元を見た。

「お錠前、触れた？」
シンジに聞く。
「うん。触れたよ。」
ミサトを見た。
「ええ。」
ミサトが微笑む。
「けど、これじゃ列できるわよね。」
「そ。けど、しょうがないよね。」
ミサトが苦笑する。
私も苦笑した。
 

地下鉄内
「これで帰って、今日は、あとは、テレビ見るくらい？」
少し大きな声で言った。
「そうねー。そうかな。」
ミサトが言う。
「まだ、１０時よ。」
「お昼、少し遠くに食べに行く？」
「遠くって？」
「そうねー、戸隠中社辺りのお蕎麦屋さんとか。」
「あ、それいいかも。」
「多分、１時間くらいで行けるから。けど、もしかしたら、混んでるかも。」
「．．．ま、いいわ。行きましょう。」
「了解。」

「そういえば、戸隠って、スキー場あるけど。」
ミサトが言う。
「午後？」
ミサトと見た。
「うん。」
「そうねー。」
「宿、取れたらにしようか。」
「車で行くんだっけ？」
「そ。」
「じゃ、ちょっとするのもいいかも。」
「じゃ、一応、一式持っていくということで。」
ミサトが微笑む。
「うん。」
ミサトに微笑んだ。
 

徳善院蕎麦極意
「お待たせしました。」
給仕さんが、蕎麦と、精進料理の器を置いていく。
「ごゆっくりどうぞ。」
給仕さんが、歩いていった。
「じゃ、食べましょう？」
シンジとミサトを見た。
「ええ。」
ミサトが割り箸を割った。

駐車場
「スキー場は？」
ミサトに聞いた。
ミサトが、バッグからプリントした地図を出して、私に見せる。
「ここって、二つのスキー場が、山頂で繋がってるらしくて、今、この国営の下のここ、ね、中社って書いてあるでしょ？」
「うん。」
「ここにいるみたい。
  それで、宿は、取れなかったんだけど、ここ、初級コースが少なくて、こっちの村営の方にいかないとまずそうなのよね。」
「なるほど、車で麓を回るわけね。」
「そういうこと。」
「了解。」
 

村営スキー場 馬瑙山山頂
「綺麗ね。」
「そうね。」
手前に高い山があって、その向こうに白い山並みが連なっていた。
「手前のが、戸隠山？」
「そうみたい。」
「日本のアルプスは、ヨーロッパのアルプスと、また違ったよさがあるのよね。」
「そうね．．．」
沈黙が流れた。

「そろそろ行く？」
斜面を見ながら言った。
「そうね。」
ミサトが言う。
「了解。」
ストックを突いた。
 

インフォメーションセンター前
「ちょっときつかったね。」
ミサトを見た。
「やっぱ、焼額は、滑りやすいゲレンデだったみたいね。」
ミサトが私を見る。
「そうね。もっと楽なコースないの？」
ミサトが、マップを見る。
「うーん。あんまりないわね。」
マップを覗き込んだ。
「なるほど。壁とか、コブとか、そういうのが多いわけね。ここ。」
「そうみたい。」
「練習だと思って、この初中級コース行こうか。」
ミサトを見た。
「了解。」
ミサトが苦笑した。
 

リビング
「はー、疲れた。」
スキーバッグを置いて、ソファに座りこんだ。
「ほんと。」
ミサトが、私の隣りに勢い良く腰を下ろす。
リモコンで、テレビをつけた。
隠し芸大会がやっていた。
ぼんやりとテレビを見ていた。

「お疲れ様。」
シンジが、私にカップを渡す。
シンジを見た。
「ありがとう。」
カップに口をつける。
葛湯だった。
「おいしい、これ。」
「ホント。おいしいね。」
ミサトが言う。
シンジを見た。
シンジが微笑みながら、私達を見ていた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:Ex.10 完 

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