サイレンが鳴り響き、地表からビルがせりあがる。

柵に手を掛け、夕日に染まる第３新東京市を見ていた。
「レイ？」
アスカを見た。
「さっきの司令、レイなんでしょ？」
アスカに肯く。
「避けられなかったわけ？」
アスカが、真顔で私を見る。
「私は、見ているだけだから。」
「．．．」
アスカが怪訝な顔をする。
目線を落とした。
「本物の赤木博士が、本物と思う位だから、完全に本物なのよ。
  ただ、赤木博士を愛しているというところだけが違う。
  それだけ。
  私が演技しているわけじゃない。」
アスカを見る。
「そう．．．」
アスカが言う。
また、目線を落とした。
「その意味では、皆、私なのよ。」
「！」
「アスカも。」
「．．．」
「アスカにも分かるように、本物とまったく同じ。」
「．．．」
アスカを見た。
「だから、ずっと一緒なのよ．．．アスカと。」
「．．．」
沈黙が流れた。
アスカが街の方を見る。

夕日に染まるアスカを見ていた。
「リツコは、分からないわけ？」
アスカが私を見る。
アスカから目を逸らし、街を見た。
「アスカが分かるのは、アスカがチルドレンだから。」
「！」
「エヴァとシンクロできるほど、ＡＴフィールドが薄いから。」
アスカを見る。
「ＡＴフィールドが薄いって．．．」
アスカが目を見開いている。
「だから分かるのよ。心の中の違いが。」
「．．．」
「だから傷つくの。アスカも。碇君も。」
「．．．」
沈黙が流れた。
街の方を見た。

「レイ？」
アスカを見た。
「本部が停電した時の事、憶えてる？」
「ええ。」
「知ってるんじゃなくて？」
アスカが、悪戯っぽく微笑む。
「意地悪ね。」
アスカに微笑んだ。
「あんたこそ。」
アスカが笑う。
笑いやんだアスカが、私を見つめる。
私から口を開いた。
「電気、人工の光がないと、星がこんなにきれいだなんて、皮肉なものだね。」
アスカが微笑む。
「でも、明かりがないと、人が住んでる感じがしないわ。」
街を見た。
「人は闇を恐れ、火を使い、闇を削って生きて来たわ。」
「てっつがくぅ。」
「だから人間って特別な生き物なのかな？だから使徒は攻めて来るのかな？」
「そんなの、わっかるわけないじゃん。」
アスカを見た。
アスカが、第３新東京市を見ている。
アスカの頬に伝う涙。
アスカを背中から抱きしめた。
肩を震わせるアスカ。

「レイ？」
アスカの背中にあてていた頬を離す。
「ありがとう。」
「．．．アスカ．．．」
アスカが振り向く。
「そろそろ行かなくちゃね。」
アスカに回した手をほどく。
アスカに微笑んだ。

車から葛城三佐が降りてくる。
葛城三佐が、ウインクしながら、親指を立てたこぶしを車の方にひねる。
「お待たせ。」
「お待ちしてました。」
アスカに葛城三佐が答える。
皆で笑った。

葛城三佐がドアを閉める。
「夕飯、どうする？」
「例の屋台は？」
葛城三佐が、加持一尉の問いに答えながら、アスカを見る。
「いいわよ。」
アスカが微笑んだ。
 

車が、コンフォート１７マンションの前に停まる。
「お疲れさん。」
加持一尉が言う。
葛城三佐がドアを開けシートを倒す。
加持一尉がトランクを開けた。
車を降り、トランクへ。
「こっちが、レイで、こっちが、アスカよね。」
「そ。」
「お疲れ様。」
「ありがと。ミサト。」
「ありがとう、ミサトさん。」
「どういたしまして。」
「じゃ、またな。」
降りてきた加持一尉が言う。
「「はい、加持さん。」」
「行こうか。」
「ええ。」
加持一尉に葛城三佐が答える。

バタン。
車が動き出す。
葛城三佐が、窓越しに手を振っている。
加持一尉が、軽く敬礼した。
二人で、手を振っていた。

「ふー。」
アスカを見た。
「疲れたわね。」
「そうね。」
「早く、お風呂入って、寝ましょう？」
アスカが微笑む。
「ええ。」
アスカに微笑んだ。
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モニターのこちら側 Genesis 2:10 完 

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