「初号機のシステムをレイに書きなおして再起動。」
「了解。現作業を中断。再起動に入ります。」
スピーカーから流れるマヤの声。

出撃する初号機。

「無理もないわ。脳神経にかなりの負担がかかったもの。」

「なんですって！？」

「辛いでしょうね。あの子達。」

「暴走．．．」

「ＡＴフィールド！！」

「いえ．．．侵食しているんだわ。」

「あれがエヴァの．．．」
「本当の姿。」

ハッ？！
目を開いた。
いつもの天井。

「夢か．．．」

鳥の囀りが聞こえる。
体を起こした。
「誕生日に、あんな夢を見るなんて．．．因果な商売ね．．．」
まだ眠っているマヤを見ながら呟いた。

マヤを起こさないようにベッドから抜け出して、洗面所に行く。
トイレに行って、そして顔を洗う。
「今日、どこに行くのかしら．．．」
鏡を見ながら呟いた。
「先輩。」
肩越しにマヤが顔を出す。
「おはようございます、先輩。」
「おはよう、マヤ。」
マヤが軽く膨れっ面をする。
「勝手に起きちゃうなんて、ずるいです。」
「ごめんね。マヤ。」
思わず、笑みがこぼれた。
「先輩。」
マヤが目を閉じる。
「はいはい。」
マヤに口付けた。
 

チン！

オーブントースターが音を立てる。
マヤが、トースターの扉を開けて、トーストを取り出し、バターを塗っていく。
「はい、先輩。」
「ありがと。」
トーストを受け取って、一口食べた。
マヤが、トーストにバターを塗っていく。
「遊園地。行きません？」
「遊園地？」
「ええ。」
「いいけど．．．」
「嫌いですか？」
マヤが、顔を上げて、不安そうに私を見る。
「あんまり行ったことないし、楽しいと思ったこともないから．．．」
マヤが私を見ている。
「そうですか。」
マヤがトーストに視線を落とす。
「マヤは、好き？」
マヤが私を見る。
「ええ。」
マヤが不安げに微笑む。
「分かったわ。」
マヤに微笑んだ。
 

カタン、カタン、カタン．．．
ジェットコースターが、ゆっくりと、最初の坂を上っていく。
マヤの手が私の手をつかむ。
ジェットコースターが、頂上から降り始め、急速にスピードを上げていく。
「キャーーーーーー！！！！！」
マヤが私の手を強く握った。

「先輩、次は、あれ乗りましょう？！」
マヤが私の手をつかんで引っ張る。
「そんなに引っ張らないでよ、マヤ。」
思わず微笑んだ。

観覧車から夕日を見ていた。
なんだか、ちょっと疲れたわ．．．
そんなことを考えていた。
「先輩？」
マヤの声。
「何？」
「今日は、ありがとうございました。」
「どういたしまして。」
マヤを見た。
マヤが夕日の方に視線をそらす。
「先輩？」
「．．．」
「私、ジェットコースターで、悲鳴を上げながら、先輩に抱きついてみたかったんです。」
「．．．」
「結局、手をつなぐことしかできなかったけど。」
「．．．」
「けど、よかったです。」
マヤが私の手に手の平を重ねる。
「先輩を近くに感じられたから。」
「．．．そう。」
マヤが私を見る。
「先輩。」
「マヤ。」
マヤに口付けた。

マヤと手を繋いで歩いていた。
「発令所で．．．」
マヤが口を開く。
「先輩と手を繋ぎたくなることがあります。」
マヤが続ける。
「先輩に抱きつきたくなることとか．．．
　先輩の背中に寄りかかりたくなることとか．．．
　先輩とキスしたくなることととか．．．」
沈黙が流れた。

「先輩は．．．」
マヤが言う。
マヤを見た。
マヤが私を見ていた。
足を止めた。
マヤも足を止める。
マヤが私を見た。
「マヤ．．．」
マヤを抱きしめた。
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モニターのこちら側 Genesis 0:Ex.3 完 

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