一人娘

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ドアの鍵を開ける。
「ただいま。」
スリッパの音。
「おかえり、アスカ。あれ、それは？」
シンジが、手提げ袋を見る。
「お・み・や・げ。」
シンジに微笑んだ。
「ふーん。ありがと。」
「なによ、その、ふーん、っていうのは。」
少し頬を膨らませながら、シンジに手提げ袋を渡す。
「いや、めずらしいな、と思って．．．これ、重いね。」
シンジが袋の中を覗き込む。
「．．．お酒？」
「そ。ちょっと、飲んでみたくなったのよ。」
「そう．．．」
シンジが、何か言いたそうな顔をしてる。
「あの娘は？」
「眠ってるよ。」
「そう。」
「お風呂が先だよね。」
「ええ。」
「わかった。」
シンジが背を向け、ダイニングに歩きだした。

娘を起こさないように静かに着替えた。
ダイニングを通って、お風呂へ。
テーブルに置かれた酒瓶。
シンジが夕飯の支度をしている。

お風呂から出てダイニングへ。
テーブルに、いくつか皿が並んでいる。
寝室へ行ってみる。

シンジがベビーベッドから静かに離れる。
シンジが振り返った。人差し指を立てて唇にあてる。
音を立てないように寝室から出た。

「お待たせ。」
シンジが、ハンバーグの皿をテーブルに置く。
ご飯をよそいはじめた。

「あと、これね。」
シンジが微笑む。
シンジが『一人娘』をグラスに注いだ。
「それじゃ、うちの『一人娘』の健やかな成長を祈って。」
「「乾杯。」」

「「いただきます。」」
お味噌汁に口をつける。
沈黙が流れた。
「シンジ？」
シンジが私を見る。
「何？」
視線を右下に落とした。
「悪いわね．．．」
「．．．」
「．．．」
「アスカのママは、アスカを愛してたと思うよ。」
シンジを見た。
「．．．」
シンジが微笑む。
「愛してるよ。アスカ。」
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一人娘 完

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