マユミは、いつもの本屋さんで、雑誌を読んでいた。
人の気配が近づく。
「おはよう。」
アスカの声がした。
マユミがアスカを見る。
「おはよう、アスカ。
  ちょっと、待ってて。」
マユミが、読んでいた雑誌を持ってレジへ歩いていく。
マユミが、会計を済ますのを、アスカが見ていた。

アスカとマユミが、並んで歩いていた。
「あ、アスカ？」
「何？」
アスカがマユミを見る。
マユミが鞄を開けて、何かを取り出す。
「はい。」
マユミが、リボンのかけられた包みを差し出す。
アスカが微笑む。
「ありがと。」
アスカが、包みを受けとり、鞄に入れる。

「ね、マユミ？」
「何？」
マユミがアスカを見る。
「手．．．繋いでいい？」
マユミが前を見る。
「．．．今は、嫌．．．」
アスカが前を見たまま答える。
「分かった。」
沈黙が流れた。
 

その１ヶ月前

「あの．．．碇君の事についてはライバルだけど、けど．．．
  お友達に．．．なれますか？」
マユミが顔を上げて、アスカを見る。
「ええ。」
アスカが微笑んだ。
マユミが微笑む。
「今度の日曜、映画に行かない？」
アスカが言う。
「え．．．ええ。」
ためらいがちに答えるマユミ。
「シンジに誘われたら、そっちに行っていいから。」
「あ．．．はい。」
「ありがとう。」
アスカがマユミの手を握り、微笑んだ。
 

マユミの部屋

ＲＲＲ．．．ＲＲＲ．．．

「はい。山岸です。」
『あの、碇と申しますが．．．マユミさん、いらっしゃいますか？』
「あ．．．私です．．．」
『あ、あの．．．チョコ．．．ありがとう。』
「あ、いえ、あの．．．迷惑じゃなかったですか？」
『そんなことないよ。ありがとう。』
「あ．．．よかった．．．」
『あ、それで、今度の日曜、空いてる？』
「あ．．．はい。」
『映画に行こうと思うんだけど、いいかな。』
「はい。」
『じゃ、１０時に、新新宿駅の東南口で。』
「はい。」
『それじゃ。』
「はい。」

ガチャ。

マユミが、電話のオンフックボタンを押して、ダイアルする。

ＲＲＲ．．．ＲＲＲ．．．

『はい。』
「あの、山岸と申しますが．．．アスカさん、いらっしゃいますか？」
『あ、マユミ？』
「うん。」
『どうしたの？』
「今度の日曜、行けなくなっちゃった。」
『了解．．．』
「ごめんなさい。」
『次の日曜．．．いい？』
「ええ。」
『ありがとう。』
「ううん。」
『明日、一緒に帰れる？』
「ええ。」
『それじゃ。』
「はい。」

ガチャ。

何か、判然としない気持ちが、マユミの中に残った。
 

翌日の放課後。映画館

ごく普通のラブストーリー。
『君が、幸せならば、僕は．．．』
『私．．．』
泣かせの場面。
マユミが目を潤ませる。
ふと、マユミがアスカを見る。
アスカがマユミを見ていた。
アスカの手がマユミの手に重なる。
 

新新宿中央公園

夕陽に染まる公園を、アスカとマユミが歩いていた。
どのベンチでも、カップルが、寄り添っていた。
マユミは、目のやり場に困って、下を向いて歩いていた。
アスカがマユミの手を取る。
マユミがアスカを見る。
「ああいう映画好き？」
アスカがマユミを見る。
「え？ええ。」
「そう。」
「アスカは嫌い？」
「マユミが好きなら、好き。」
沈黙が流れた。

「そういう答え．．．ずるい。」
マユミが口を開く。
「そう．．．」
アスカが答えた。
「ね、帰ろう？」
マユミが言う。
「そこのベンチ空いてる。」
アスカがマユミの手を引く。
「アスカ．．．」

アスカとマユミが、ベンチに座っている。
「ね．．．」
マユミが口を開く。
「何？」
アスカが口を開く。
「どうして？」
マユミが言う。
「好きだから。」
アスカが言う。
「そう．．．」
マユミが呟いた。

「ね。マユミ。前見て。」
アスカが言う。
前のベンチのカップルが唇を合わていた。
マユミが、思わず、目をそらす。
「ね。しよ。」
アスカが囁く。
「あ．．．」
マユミが呟く。
アスカの手がマユミの顎に触れ、少しづつアスカの方に向けていく。
「だめよ．．．アスカ．．．」
「好きよ．．．マユミ。」
アスカの唇がマユミの唇に触れた。

アスカの唇がマユミの唇から離れる。
マユミが俯く。
アスカがマユミの手を握った。

「帰る？」
アスカが呟く。
「うん。」
マユミが呟いた。
 

次の日曜日

「きゃああああああああ！」
アスカがマユミの手を強く握る。

カタンカタンカタンカタンカタンカタン。
ガーーーーー。

「きゃああああああああ！」

「おもしろかったぁ！」
そう言って、アスカがマユミの手を取る。
「そうだね。」
マユミが微笑む。
「次、何乗ろうか？」
「コーヒーカップは？」
「じゃ、行こう！」

「きゃあああ！」
アスカがテーブルを力まかせに回している。
「や、止めてよ、アスカァ！」
マユミが声を上げる。
「やーだよ！」
アスカが、さらにテーブルを回す。
「きゃあああ！」
マユミがアスカに抱き付いた。

観覧車から夕陽を見ていた。
「マユミ。」
アスカが囁く。
マユミがアスカを見た。
アスカが顔を近づける。
マユミが目を閉じた。
アスカの唇がマユミの唇に重なる。
マユミが唇を開いた。

アスカの唇がマユミの唇から離れる。
マユミが潤んだ目でアスカを見る。
アスカもマユミを見た。
マユミの唇がアスカの唇に重なった。
 

その次の日曜日の夕方

「今日は、ありがとう。」
シンジが言う。
「あ、私こそ。ありがとうございました。」
マユミが言った。
「それじゃ。」
シンジがマユミに背を向け、歩いて行く。
マユミはシンジの背中が人ごみに消えるまで見送っていた。

マユミがバッグから携帯を取り出す。
マユミが、手馴れた手つきで、短縮ダイアルを押す。

ＲＲＲ．．．ＲＲＲ．．．
『はい。』
「私。」
『今、どこ。』
「新新宿の中央東口。」
『分かった。待ってて。』
「うん。」
ガチャ。
 

３０分後

マユミは、改札から少し離れた柱にもたれていた。
「お待たせ。」
アスカの声。
マユミがアスカを見る。
アスカが微笑んだ。
「アスカ。」
マユミが微笑む。
「夕飯、食べるでしょ？」
「ええ。」
「どこがいいかな。」
「どこでもいいよ。」
マユミがアスカの腕を取る。
アスカがマユミを見る。
「マユミ。」
マユミがアスカを見る。
「好きよ。アスカ。」
「ありがと。マユミ。」
アスカが微笑んだ。
 

その次の日曜日

マユミがドアの鍵を開け、ドアを開ける。
「あがって。」
マユミが言う。
「お邪魔します。」
アスカが言う。
「今日、夕方まで、私一人だから。」
マユミが言う。
「そう。」
アスカが言った。

アスカが、マユミの部屋のベッドに腰掛けていた。

コンコン。

ドアが叩かれる。
ドアが開いた。
マユミが、急須と湯のみの載ったお盆を持って入ってくる。
マユミがテーブルにお盆を置いて、湯のみにお茶を入れて行く。
「はい。」
マユミがアスカに湯のみを渡す。
「ありがと。」
アスカが、湯のみに口を付ける。
マユミが、湯のみを持って、アスカの隣りに腰を下ろす。
沈黙が流れた。

アスカが湯のみをお盆に置く。
「ありがと。」
アスカがマユミを見る。
マユミが湯のみをお盆に置いた。
マユミがアスカを見る。
「マユミ。」
アスカが囁く。
「アスカ．．．」
マユミが呟いた。
アスカがマユミに口付ける。

．．．
 

ホワイト・デーの朝

アスカとマユミが、教室に入る。
まだ、誰も来ていない。
「マユミ。」
アスカがマユミを見る。
「アスカ。」
マユミがアスカを見る。
アスカの唇がマユミの唇に重なった。
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赤いリボンと緑のベスト Genesis 0:1 完 

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